犬と猫の下痢を鑑別する(超専門分野なので、いつも以上につまらない。。)


ダサカッコいい・・!

下痢。。これは一番、飼い主さんが遭遇する病気でしょう。
という事で今回は獣医1年目にレクチャーする感覚で
レベルで下痢症の鑑別をしてみましょう。
検査と治療は無いです。ボリュームがあるから

目次タイトル

  1. 下痢で注目する2つ
  2. 下痢を鑑別してみよう
  3. 下痢を診断してみよう
  4. ホントはここまで見てる鑑別

色々、考え方がありますが古典的に・・・


下痢で注目する点は2点です。

経過と病変部


1、急性か・・慢性か・・?


急性 = 始まって2週間くらいまでをさします。
慢性 = 3週間以上をさします。


「お前、バカ?急に始まるんだから全部、急性じゃないの!」って思いましたよね

まぁ。。。そうなんです。来院したときは全て急性下痢症で対応します。

だって急性下痢症には緊急症例が混じっているんですもん。

ときに「そういえば、3週間くらい前から。。かな?」という話が出れば慢性下痢症で対応します。当然、初診時の急性下痢症の中には慢性下痢症も含まれていることは想定して進めますが

取りあえず、急性か慢性で分けるんです。



2、小腸性下痢か?大腸性下痢か?


病変部を絞り込んで病名を当て込もうってことです。
様々な分類方法があるんですが一番、見分けやすいのが

小腸性下痢

吐く。もしくは吐き気がある。
大量の下痢便。しゃーーーー。。しゃーーーーって感じ、便のボリュームもBIG
ウンコの回数自体は普段より少し多いくらい。
時に。。黒色便。。胃潰瘍での出血は真っ黒になります。
他に体重が減ってきた。。などですね

大腸性下痢

粘膜便である。ウンコにあんかけがのってます。ママなら粘膜便、一目わかります。
しぶりがある。ウンコが出来ってない感がするようで、トイレで粘ります。

何回も下痢する。しかも少量。ブリブリ。ブリブリ。切迫便とか言ったりします。
しまった・・・出ちゃった~。。とぼとぼ。。
時に。。鮮血便。。血肛門に近い側の出血ってことです。

教科書的には他にも書いてありますが
いらないっす。

個人的には下痢は性状で分けるほうが
良いと感じるのですが、そんなこと書くと”怪しいヤツ”ってことになるんでスルーです。

目次に戻る

おまけの3、消化管に原因があるのか?他の内臓に原因があるのか?


専門用語で原発生か?続発性か?って言います。
消化管で起きているのか?他の原因で下痢が引き起こされているのか?ってことです。

続発性の類ならば肝不全や腎不全、膵臓なんかに問題があると下痢をすることがあります。

3つ目はあるって事だけ知ってればいいです。



当たり前ですが
ホントは嘔吐、腹痛、元気食欲、年齢、犬種、など色々、ポイントがありますし
下痢の分類はその原因によりさらに4つに分けることが出来るんですが
獣医1年目は良いです。。



では組み合わせにうつりましょう。

wikiより



下痢を鑑別する

1、急性か?慢性か? 2、小腸か?大腸か? 3、続発性か?原発生か?


Ⅰ、急性で小腸性の下痢


目次に戻る

症状が軽い
ストレス(車で遠出した、ペットホテルに泊まった)
食あたり(ミルクを飲んだ、焼肉食べ過ぎた、腐ってた)
感染Ⅰ(寄生虫、原虫)

急性で症状が重い。元気消失、血便などを伴う。
感染Ⅱ(細菌性=クロストリジウム、カンピロバクターなど)
ウィルス(ロタ、コロナ)
腸閉塞(異物、腫瘍など )


膵炎(嘔吐、元気食欲の極度の低下を伴う)


ちなみにですが僕は閉塞原因を閉塞ファイブって呼んで覚えてます。
腫瘍、ヘルニア、癒着、捻転、異物の五つです。
捻転に重積、陥頓などを含めてエコーで鑑別してます。
閉塞の種類(背中の痛みHPより)




Ⅱ、急性で大腸性下痢

感染Ⅰ(寄生虫)
感染Ⅱ(細菌=クロスト、カンピロなど)
痙攣性大腸炎


Ⅲ、慢性で小腸性下痢

食物アレルギー(グルテンアレルギー、牛肉アレルギーなど)
感染Ⅰ(寄生虫、原虫)
感染Ⅱ(細菌=クロスト、カンピロなど)
慢性膵炎(ちょう臭い、食べるのに痩せるなど)
免疫系の腸炎(IBD,タンパク漏出性腸炎など)

慢性で症状が重い
占拠性病変(異物、腫瘍とかがある = 嘔吐、食欲不振、扁平ウンチ)


Ⅳ、慢性で大腸性下痢

感染Ⅰ(寄生虫、原虫=トリコモナスなど)
感染Ⅱ(細菌=クロスト、カンピロなど)
免疫系の大腸炎
痙攣性大腸炎

症状は進行すれば重くなる
占拠性病変(異物、腫瘍とかがある)



Ⅴ、続発性は腎不全や肝不全などですが
下痢以外の症状のほうが強烈です。
元気がない、全然食べないなどのほうが気になるはずです。



以上ですが。。大別で何個だ?5カテゴリーか。。


目次に戻る


じゃあ。一つクイズを出しましょう。

(ウンコが出るので注意してください。)


あまぞんの出品より一部改編




症例
あなたが朝起きたら猫(10歳、避妊メス)が部屋で下痢をしていました。

血が混じっていて、もうパニックです。。

血便は今回が初めて
昨日はとくに変わった事はしていません。
また今も普段と様子は変わりありません。

下痢は1回だけ。
ただ何回もウンコ姿勢を取り、出し切れていない。。感はあるようです。



何が原因だと思いますか?




症状みて
まず、急性か?慢性か? 。。
次に、大腸性か?小腸性か?。。
下痢が一回だけというのは小腸性下痢に近い気もしますが。。







自分の考察

今朝から始まっているので急性でしょう。
排便姿勢を何度も取るのは、大腸性下痢の特徴です。
下痢が一回だけという事で、大腸。。とくに直腸機能は保たれているようです。
しかし、便の形にピーピー感がないですよね?
これも大腸性下痢の特徴です。

下痢に”あんかけ”が掛かってます。
これも大腸性下痢の特徴です。

血が便に混じってますね。。すこし黒ずんでますが。。これも大腸性下痢です。





別の子の便です。メレナ(黒色便)の例です。
乗っかってる黒い物体がいわゆる黒色便(メレナ)です。
出血地点は胃です。
なんで一部にだけなのか?混ざらなかったのか?よくわかりません。






あと、けっこう大事なのが症状がマイルドって事です。
実際、重症症例であっても大腸疾患は症状がマイルドにでます。
病気の初めのころは派手な嘔吐も、食欲廃絶、元気消失も無いです。



まぁいいや。以上より、大腸になんか原因があるんでしょう。。




なので次に。。急性の大腸性下痢でかつ症状がないカテゴリを見ます。




急性で大腸性下痢のカテゴリ

感染Ⅰ(寄生虫、原虫=トリコモナスなど)
感染Ⅱ(細菌=クロスト、カンピロなど)
免疫系の大腸炎
痙攣性大腸炎

症状は進行すれば重くなる
占拠性病変(異物、腫瘍とかがある)




この中で、出血を伴いそうなやつ?わかりますか?


実際はどれも出血しそうですよね。。

ただ、あんなに出血するとなると、占拠性病変。。ポリープや腫瘍が怪しいです。
便が通過する時に腫瘍の塊から出血したのでは?と思いました。
年齢が高いことも、占拠性病変を疑う理由にもなります。

急にあれだけの血便にポリープの類でなるか?
なんか引っかかりますが。。まぁいいです。


ココからは便検査などをして、具体的に絞り込みます。
それ以上の絞り込みは見た目だけでは不可能なので。。検査の話は。しません。
大変な量になるからです。


結局、この子は内視鏡をお尻から突っ込んで
病名は腺がんでした。。大腸腺がん。。外科で手術してもらいました。

勿論。。病院では急性大腸性下痢の全てを疑い検査をしたうえで
勝算があって内視鏡に至っているので病名を決めてますのでご安心を。

飼い主さんが、これはどうだろう??という参考になればと思い
かなり荒っぽいながら書いてみました。

タメになったかどうか知りませんが
下痢のあたりの付け方を書きました。
目次に戻る

まこんなところかな。。これは一般の方がついてこれるとは思えない。。
本来は、読めば自分で診断できる一般人を育てたい。。という気持ちから始めたんですがね。。やっぱ無理だな。



ホントは頭の中では以下まで見てます。


目次に戻る

見るべき場所


体温、体重、心拍、呼吸、脈拍、CRT(循環),歯肉、脱水
悪心、腹痛の有無(場所=特に放散痛)
元気、食欲(接触恐怖の有無)、おしっこ、咳き込み

例えば腹痛:
動かない
震えている
腹筋に力が入っている(入らない場合もあり)
腹部の膨満感(ときに腸管とわかる)
腹部聴診にて腸管の動きが亢進、低下(グル音)

涙目
流涎(きもちわる。。)
吐き気 から 嘔吐 (吐物の色と、回数が大事)


上記以外の鑑別

急性腹膜炎
急性胆管炎
胆管閉塞
慢性膵炎
腸間膜虚血
憩室疾患

閉塞系=腫瘍、異物、捻転、癒着、重積、ヘルニア
機械的イレウス
機能的イレウス
偽性腸閉塞

尿路疾患
妊娠




目次に戻る