涙やけに悩む犬に病院に行く前に試してもらいたいこと(原因と対策)
”涙やけ” は昔からよく知られている症状でした。
20年も前なら ”プードルなら、そういうもんじゃない?” という意見が多く
気にしない飼い主さんが多かったのですが
ここ10年くらいでしょうか。。涙やけを気にされる飼い主さんが増えてきました。
”涙やけ” の事を獣医学用語で ” 流涙症 ” (りゅうるいしょう) といいます。
涙が目から溢れ、被毛に濡らし、涙の成分が目周囲の毛に沈着し茶色く変色させます。
見た目が悪いだけじゃないの??と以前は思われていましたが
現在では角膜の傷が原因であったり、涙やけが皮膚炎の原因となる事がわかっています。
涙やけは単なる個性やアレルギーではなく目の病気を引き起こすかもしれない
そういう意識を持ってください。
涙やけの話をする前にイントロとしてまず、涙が流れる構造をご覧ください。
Dog eye anatomy 一部、改編 |
そして角膜表面のゴミや余分な涙液は瞬きなどにより涙点(入口)を通り鼻涙管を流れて鼻(出口)に出ていきます。
ただし、短頭種の場合、鼻涙管は口腔内に開口しています。
ここが、獣医学の難しいところで犬種特異性があります。
以上の涙の流れを踏まえたところで。。涙やけの原因について
”涙やけ”の原因大きく分けて3つです。
1、涙の通り道がない
涙点(入口)、鼻涙管、鼻(出口)までの間に道が狭くなったり、あるいは行き止まりになっていたりするために起きる涙やけです。
原因として
- 生まれつき行き止まりになっている場合
- これは子犬の時から涙やけがある時に疑います。
- 涙の通り道で炎症が起きてしまい涙の道が狭くなった。
- 感染やアレルギーなどが考えられます。
- この場合、目周辺に痛みが出ることがあります。愛犬に痛みはありますか??
- とくに最近は黄砂など目に付着するゴミが増えており鼻涙管に詰まり、炎症を引き起こす危険性があります。
2、涙の質が落ちている
涙腺から分泌される涙液、特にマイボーム腺(主涙腺のあたり)と呼ばれる分泌腺から分泌される油を含んだ涙液の質が落ちると涙液はサラサラになってしまい、目表面での粘りを失い眼球を覆うことなくあっという間に鼻涙管に流れてしまいます。
涙液が流れてしまうと目が乾燥するのでさらに涙液を分泌しようとして。。の悪循環です。
3、目に傷がついている
これが最も多いと言われています。
涙の量が増えたから涙やけになっている
原因として
- 逆さまつ毛などが角膜を刺激して痛いので涙が出ている(異所性睫毛=いしょうせいしょうもう)
- 角膜にすでに傷がついていて痛くて涙が出ている。
- ノギや砂などが関係しています。
- 顔回りの毛が目にあたる場合(睫毛乱生=しょうもうらんせい)、これも同様です
- 目への刺激になるばかりでなく
- 毛を伝って涙が落ちるので目表面の涙が減り乾燥する。
- 減った涙を補おうと涙が分泌されの悪循環。
簡単に言えば毛が邪魔ってことです。
以上を踏まえ、医療を頼る前に
家でできることはないか?考えましょう。
家でできることはないか?考えましょう。
1、ご飯を変えてみる。
獣医学的な根拠は知りませんが、ある特定の水やアレルゲンフリーなペットフードに変えることで涙の成分が改善され涙やけが減った???とのネット情報があります。
あくまで飼い主の印象です。もしかしたら効くのかもしれません。
やる価値はあると思います。
2、サプリメントをあげてみる。
涙やけに聞くといわれるベリーなどの成分が入ったサプリメントが発売されています。ハッキリ言って、よくわかりません。。
効果があるから、売れているわけであり、売れていること自体がエビデンスなのだと言われればその通りなので、上記の方法を試されるのもいいかもしれないです。
しかし、これらは金がかかります。
そこで解剖組織的、病態生理学的に見て、以下がお勧めの対策です。
3、目を温めての涙道マッサージ
タオルを適度に温めます。
髭剃りの時、当てられるタオルくらいの温度で良いと思います。
それで犬の目を覆い、嫌がらないように目周囲にマッサージを加えます。
このマッサージは耳鼻咽喉科で行われる涙道マッサージと言われるものなので
馴染みの人もおられるかもしれません。
上記の解剖図を参考に
目周囲を涙道から鼻に詰まり物を押し出すイメージで軽く軽くマッサージします。
またこの時、マイボーム腺(主涙腺の近傍)を温めることイメージも持ってください。マイボーム腺は油を含んだ腺ですので温めることで分泌が促され、涙液の質が上がります。
涙道マッサージに関してはそういう動画もございますので参考にしてください。
1回の時間はタオルがぬるくなるまで、回数は1日2回、できれば何回もと言われています。
4、目周囲のトリミングをこまめに行う。
単純に目に被毛が入らないようにします。
以上の対策をまずとってみてください。
だたし、この涙道マッサージは急に涙が増えたとき、目の下を触ると痛がるときは時はやってはいけません。マッサージで炎症を重くする可能性があります。
一月以上、涙やけが続いてる場合などは慢性的な涙やけなので涙道マッサージを施して良いと思います。
これで治らない場合は鼻涙管を完全に塞ぐ何か?があったり
ルーペで診察しないとわからない細かい毛が目に刺激を加えていたりと
獣医による診察が必要です。
また黄砂が舞う季節は目にゴミが付きやすく、鼻涙管に直接、アレルゲンが流れることによるアレルギーや、埃による鼻涙管の狭窄の危険性は高くなると考えられます。
いろいろ書いてきましたが眼科処置は鎮静、麻酔が必要な場合が多いので出来れば上記の対策でどうにかなってほしいと願ってます。
極論かもしれませんが黄砂の季節はゴーグルがいいかもしれませんね。
amazonより引用 |
注:黄砂と鼻涙管閉塞に関しては私見です。花粉症ついても獣医の間ではあるというコンセンサスがありますが、はっきりとエビデンスが存在するわけではありません。
また症状は個体により異なるので気になる症状があれば獣医の診察をお願いいたします。
参照文献
カラーアトラス犬と猫の眼科学
獣医眼科アトラス
小動物の眼科学マニュアル
それぞれ涙器の章のところ
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