突然、愛犬の目がグルグル!フラフラ。脳の病気!?前庭障害!?・・? 原因編 1


ある夏の暑い日、愛犬は朝から”おかしかった”のです。
食欲もなく、頭が変に傾き、何だか真っ直ぐ歩けない様子でした。

最近、暑かったので夏バテになったかな??と思い
あなたは窓を閉めエアコンを入れて、愛犬を寝かせると
家事を済まそうと一旦、立ちました。

30分後、愛犬の様子を見に戻るとあなたは驚愕します。

愛犬の目がグルグル回りだし、傾いた頭が小刻みに震えています。
口からは涎が流れ悪心を催しているようです。
朝はフラフラする程度だったのに、今はまったく立てません


急変に慌てて、あなた は動物病院に連れて行きました。
そこで告げられた病名は 前庭障害 というものでした。
獣医は何やら説明してくれますが耳にははいりません。

ですが

" 治るか分からない。。 " この言葉だけは耳に入りました。

急に訪れる、この恐ろしい症状を引き起こす前庭障害とは一体、何なのでしょうか?どうしたらいいのでしょうか?


― 前庭障害とは? ―

難しいことは全て、すっ飛ばしますんで詳しく知りたい方は
別の詳しく書いてあるサイトをご覧ください。
また獣医学的な正確性よりも分かりやすさを重視して解説します。


前庭障害ってのは内耳にある前庭器官が障害を受けることです。
前庭器官とは耳の奥にある
身体の平衡感覚などを脳みそ伝える感覚器官です。
左右の内耳につずつあります。

この前庭器官が狂うと
脳みそは身体がどっちに向いているのか?身体は真っ直ぐなのか?斜めなのか?
まるで分かりません。

― 主な症状として ―
  • 捻転斜頚 (頭が傾く)
  • 眼振   (目がグルグル回る=水平方向の眼振)
  • 歩行障害 (身体が曲がる=立てるって事!!!)
  • 嘔吐
  • 流涎   (涎だらだら)
  • 高齢犬多い (10歳くらい)
  • 発症後、悪化しない 
  • 異常行動がない(異常な食欲、壁に頭を押し付けるなど)
あとは体調不良に伴う食欲不振、元気消失ってところでしょうか?

この前庭器官が障害を受けた犬や猫は

ココはどこだ?体がフワフワするぞ。いかん!目が回る。。なんか体が傾いてしまう。。
もっと身体を曲げなければ!!てな感じです。


悪くなった側の平衡感覚が死んでしまうので、悪くなった方、悪くなった方に体が傾くわけです。

目がグルグル回るのは理屈は難しいのでココでは置いときましょう。回るのです。
動画は前庭障害に特有な眼振、細かく言いますと方向固定性水平眼振といいます。


- 原因は? -

前庭障害の原因ははっきりわかっておりません。

人の前庭障害も、ある日突然、起こり徐々に治っていく原因不明の病気とされており
動物の前庭障害も完全にもとには戻りませんが、徐々に治っていく物なのです。

前庭障害は急に起こって少しずつ治っていくが・・
完全に元には戻らない、という特徴があります。


脅すようですが。。突発的な症状を起こす病気は大体、前庭障害ですが同様の症状を引き起こす病気は複数あり

その鑑別は特別な知識がないとできません。
なので一回は詳しい人に診てもらうことをお勧めします

ただ獣医に診せろとはいいません。。
獣医には得手不得手があるので、分からない獣医はトンチンカンな事を言い始めます。


同じような症状が起きる病気
  • 外耳炎
    • 耳の炎症が鼓膜を越えて内耳に行ってしまうことがあります。
    • 診断
    • これは一目瞭然です。
    • 運動機能は保存
    • 悪化しない
    • レントゲンを撮ると内耳が真っ白になってます。
    • 治療
    • 外耳炎、中耳炎、内耳炎の治療を行います。
    • 治療は数か月単位の長丁場になります。

  • めまい症
    • 難しい話は置いときまして
    • 内耳にある耳石と呼ばれるものがフラフラさまよう事があります。
    • フラフラしている耳石は自然に身体から取り除かれますので
    • 心配いりません。
    • メニエールなんかもここに入れていいです。
    • 診断
    • 検査をすれば簡単に診断できます。
    • 運動機能は保存
    • 悪化しない
    • 獣医にやってもらってください。
    • 治療
    • 安静にしてもらい、看病します。

  • 脳血管障害
    • 動物にも脳梗塞はあります。
    • なかなか映像として残すことは難しいのですが
    • CT や MRI で確認できます。
    • 診断
    • 臨床症状から推定します。
    • 運動機能障害
    • 悪化しない
    • 獣医にやってもらってください。
    • 治療
    • 安静にしてもらい。自宅で看病してもらいます。
    • どこまで回復するかは神のみぞ知ります。

  • 脳炎など
    • パグやチワワなどに多いです。
    • 診断
    • 臨床症状から推定します。
    • 運動機能障害
    • 悪化する
    • 診断は獣医に任せましょう。
    • 確定診断ではなく仮診断で治療します。
    • 治療
    • ステロイドなどを用いた免疫抑制療法を行います。
    • 長生きは難しいです。

  • その他、脳の病気、水頭症や、脳腫瘍
    • 一括りにしたのは細かく解説する意味がないからです。
    • 診断
    • CT MRI ですね。
    • 運動機能障害
    • ケースによる
    • CT、エコーを撮らずに確定診断する獣医がいるようですが
    • 信用ならないのです。
    • 治療
    • メインの話題ではないので割愛します。

  • 低血糖やミネラル異常
    • 診断
    • 前庭障害と判別に困ることはないです。
    • 診断は獣医に任せましょう。
    • だたコレはコレで厄介です。
    • 治療
    • 原因治療を行います。詳しくは割愛します。
ざっとこんな病気が前庭障害と似ていて、間違われてしまう可能性のある病気です。
実は獣医に頼らずとも
前庭の診断に関しては簡単な見分け方があるんですが
長くなってしまうので、またの機会に書きたいと思います。
次回は、その対処法を書きたいと思います。

治療編へ続く




参考文献
レジデントノート めまい診療に自信が持てる(2016.2.10)
SA Medicine '15/10月号(No.99) 一目でわかる症候シリーズVol.5 発作
犬と猫の神経学マニュアル 緑書房