訂正しました。。猫のフィラリア感染。。予防したほうがいいかもしれない。。の巻

ancient egyptian animal mummiesを一部改編

今回は猫のフィラリア感染がどれくらいあるのか調べようと思います。


日本ではとかく猫ちゃんに自由を許しすぎます。
猫ちゃんは立派に狂犬病に罹るにもかかわらず。狂犬病の予防接種を受ける義務がありません。
犬が街中をウロウロしていたらスグに保健所に連行されてしまうにも関わらず、猫ちゃんが独り散歩を楽しんでいても誰一人、その光景を疑う者はおりません。

猫ちゃんは気ままな生活を楽しむがゆえ、犬に比べ大変、研究が遅れております。
今回のテーマ、猫のフィラリア感染率もかなり大雑把な研究しかございません。
その中でも最も信頼に足りそうな論文をご紹介いたしましょう。

この調査は20年前(1989-1995)、日本大学の人獣共通感染症研究室(獣医学科)で行われた物で、1997年に発表されました。。。古いですね。。仕方ない。

調査は埼玉県の愛護センターやシェルターに保護された猫ちゃんとワンちゃんを対象に行われたのもで犬猫合わせて、2340匹(猫1840、犬500)が調査されました。

結論から言いますと、予防した方がいいかもしれない。。です。


では結果を報告します。

―1、猫のフィラリア感染はほぼない―

調査では猫のフィラリア感染率は0.8%(15/1840頭)、犬では46.8%(234/500頭)でした。 

―2、年齢を重ねるとフィラリア感染の割合は犬でも猫でも高くなる―

2歳以上の猫のフィラリア感染率は4.1%(15/364頭)
2歳以上の犬のフィラリア感染率は64.6%(226/350頭)でした。

野良の猫ちゃんのフィラリア感染は2歳以下で0%。
2歳以上の猫ちゃんのフィラリア感染率は犬の10分の1程度の感染率です。


―3、猫エイズや猫汎白血球減少症との関連はない―

猫エイズに罹っていた猫ちゃんはフィラリアに罹りやすいのか?という疑問は当然出てくると思いますが、お互い関係ないようです。


―4、オカルト感染が多い―

オカルト感染というのをご存知でしょうか?
オカルト感染というのはフィラリアに感染しているが”大人のフィラリア”が子供を産まない状態です。
子供のフィラリアを”ミクロフィラリア”というのですが”大人のフィラリア”が"高齢"だったり"オス"しかいない場合。。子供が生めず子供フィラリア = ミクロフィラリアがでてこないのです。

!フィラリアってオスとメスがいます!
!オスとメスがいないと子供が出来ません!

だからどうしたの?。。と思われる方がいると思いますが
これは重要な意味を持ちます。

それは

-町の動物病院では猫のフィラリアを診断できない-


一般的な動物病院ではフィラリア感染を血液中に子供のフィラリアがいるか?で判断します。
上記のようなオカルト感染の場合、血中に子供がいないわけですから100% フィラリアの感染を見逃します

ですので、猫ちゃんのフィラリア検査をしたい場合、フィラリア抗原検査をしてください。とはっきり言わなければいけません。その方が検出率は高まります。


!!!獣医によってはこの事実を知らない人がいます!!!!!飼い主が賢くなってください!!


最近の獣医は知ってますが、ちょっと高齢の獣医さんとか知らない人がいます



You-tube より一般的な動物病院で行われる、血液検査でのミクロフィラリア(子供のフィラリア)の検出の動画があるのでご紹介いたします。

タイトル:microfilaria in blood sample 投稿者:ldurden1


この直接鏡検査によりミクロフィラリアがいなければ、感染していないとして、カルテに書きます。。。しかし実際はオカルト感染の可能性があるので抗原検査などをしないと、本当にフィラリアがいない。。とは言えないのです。




―フィラリアは猫ちゃんの心臓では暮らしにくい―


ところで。。この調査ですが実は殺処分された犬と猫で行っています。

動物倫理に厳しい今では考えられません。
2000頭を対象にしたこの調査ほど信頼できる疫学的な調査は今後でないでしょう。
ゆえに20年も前の調査が今でも日本では引用されるわけです。。

この時の調査では殺処分後、解剖が行われ、どれくらいの大きさのフィラリアが何匹いたのか?身体のどこに寄生していたのかが調べられています。

細かい話は論文を読んでもらいたいのですが
寄生していた大人のフィラリアは感染猫1頭につき1匹から3匹、平均で1.5匹でした。
そんなにいないんですよね。。

しかし、フィラリアは1匹でも寄生していればアレルギー症状を起こす事はよく知られています。
実際、感染猫の7割は咳や嘔吐、食欲不振など症状があったとされておりますし
猫の急死の原因の10-20%はフィラリアが関わっているとのアメリカでの報告がそれを裏付けていると考えられています。。。

主なフィラリアの症状

以上を踏まえると。。感染したら確かに厄介だけど
感染する確率が、猫ちゃんが車に轢かれる確立よりずっと低いじゃん。。
別に予防いらなくね?って思いません??

私はつい昨日まで、そう思ってました。すごい批判が聞こえてくる。。あわあわ。。

だってですよ。。


フィラリアの感染率をもう一度思い出してもらいたいんですよ


感染率前項の犬のフィラリアでも書きましたが、地域に依りますが。。

23区内では非予防犬のフィラリア感染率は18%なので、2歳以上の猫の感染率は2%ほどになると思います。

23区外では29%の非予防犬がフィラリアに感染していたので
同じく非予防の猫ちゃんなら3%程度がフィラリアに罹ると考えられます。

そのうち、7割が症状に至ると考えると
都心では1%、区外ですら2%。。が実際にフィラリアで苦しむ猫ちゃんです。

これが高いか?低いか?はお任せいたしますが。。私は低いと思った。。ぶっちゃけ

ですが、この数字に気が付き考えが変わりました。

皆さんは今。。。


?????東京都にどれくらい猫がいるか????
しっちょりますか?


東京都の試算によりますと。。平成10年とかなり昔の報告ですが。。

!飼いネコ105万頭、野良猫11万頭ですよ!


つまり。。結論を申せば


猫のフィラリア感染はしにくい。。

けど東京都では2万頭は感染していると推定できる。


訳なのです。。これを、どう考えるかはお任せいたします。。




私個人としては”猫の予防は不要”と思っていました。
つい昨日までは。。でも予防先進地域、東京ですら数万頭規模で感染している可能性がある。という結論にいたり、これは予防したほうがいいのでは?と思うようになりました。

最終的には飼い主さんの意向が全てです。
様々な情報を考慮し、愛猫の健康と向き合ってください!



では!また!
読んでくれてありがとうございます!


*本来、フィラリアは隻と数えますが、分かり易いように匹で数えています。
このように獣医学的な正確性より分かり易さを重視してます。

参考文献

Prevalence of Dirofilaria immitis Infection in Cats in Saitama, Japan

家畜寄生虫病学(浅倉書店)
図説獣医寄生虫学(メディカグローブ)
東京都福祉保健局HP