動物病院の不思議な話
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それは症例として不思議ということもあるし
理解できない現象としても遭遇する。
なんだか理解できない、そんな話をしてみようと思う。
―噛みつこうとする―
動物病院には様々な事情の犬や猫が運ばれてくる。
飼い主が四六時中、手放さないほどかわいがられているペットもいれば
ずっと放っておかれ、知らない間に死んでいたという事もある。
何日も飼い犬に会っていないというのは、都会に住んでいる人には理解できないと思うが
農場などでは四方に散らばって犬を配置することがあり
そういう事態もそれほど珍しくはない。
そんなある日、犬が死んでるかもしれないから見てくれ?という電話を受けた。
ある寺からだった。
寺につくと、犬小屋に案内された。墓の隅に犬小屋はあった。
犬を見ると、前の足が大根のように膨れていて、ウジが湧いているのが分かった。
犬は生きていた。
恐らく腫瘍だろう。腫瘍が大きくなり表面が壊死してウジが湧き、弱って動けないところを死んだと勘違いされたようだ。
どうやってここまでご飯を食べていたのか?水を飲んでいたのか不思議だった。
その犬は入院することになり病院に連れて帰った。
えらいウジで取り除くのに2日ほどかかったが、治療の末、徐々に体も持ち直して
末期がんながら、静かに亡くなる環境を自分なりに整えてやれてきたと思う。
一週間ほどすると飼い主がやってきた。最初お見舞いかと思ったが
お金がないから治療費を払えない、いますぐ安楽死をさせてやってくれと頼みに病院に来たと院長から聞かされた。
犬は安楽殺された。
飼い主の希望もある。
飼い主の希望でもあるが末期がんで肺転移もあったので近いうち呼吸困難になることがわかっていて
命には申し訳ないが飼い主がお金を払う意志がない以上、これ以上のサポートは難しい。批判はあるだろうが院長が安楽殺をおこない、私が心停止を確認した。
飼い主はお寺という事もあり、自宅で埋葬をするという事だったので
私はいつものように
犬の亡骸をお風呂に入れ、詰め物をしようと
遺体に触れた
その時
犬が”クワ”っと振り起き、私に噛みついてきた。
一瞬、ほんの一瞬。次の瞬間にはなんともない。
自分が疲れていただけなのかもしれない。
だけど私はその子に触るのが申し訳なくて
他の看護師に手伝ってもらった。
看護師は何にも感じないようだ。
そういう事はたまにある。
その時、やっとわかる
犬、猫がどんな気持ちだったのか
どんなに私たちが恨みを買っていたのか
無念であることを
死ぬ前になんで気が付けないのか
わからない。
その安楽死の犬は人間をというか
僕を許してない。
そう感じた。
まだ吐露したいことがあるけど、次の機会にしたい。