犬、猫のフィラリア感染について語る。。どれくらいの犬がフィラリアにかかるか?の巻

How does canine tapeworm medication work?一部改編、フィラリア症ではありません
英語で書いたら、見直すと誤字だらけだったから、やめようと思う。。

CDCより バンクロフティの生活環
上図の生活環はバンクロフト糸状虫ですので犬に寄生する犬糸状虫 (Dirofilaria-immitis) とは違いますが、生活環は似てるので転載しました。人のところを動物に変えればいいんです。

このバンクロフティってのは人間にかかるフィラリアで熱帯地方で猛威。。んー猛威ってほどじゃないけど見られる寄生虫です。
この寄生虫に冒されるとリンパ管が腫れまくって象皮病、陰嚢水腫って病気になるのですが。。ホントか?分かりませんが”寄生虫の先生”は
「コノ、バンクロフト糸状虫は昔はね本州まで勢力圏だったのだよー、この絵を見給え・・これが陰嚢水腫だよ」って授業で話してた。
wiki より。右上の男性の金玉が問題の病気?
真偽のほどは定かでないけども、昔は本州にもいたのかもしれないです。

今回は本題ではないので、その話は置いときまして

とりあえず日本における犬、猫のフィラリアの有病率をご紹介いたしましょう。

1年生獣医は、高い薬を勧めるくせに「予防しなかったら、どうなんだよ」って質問に答えらんないことが良くあります。
誰でも最初は1年生であります。。知らない新米獣医には飼い主さんがワン,ニャンの先輩として教えてあげて下さい。。本末転倒ですな

ココに2014 年に日本大学の人獣共通感染研究室が調査した報告がございます(獣医学科って事っすね)。
この調査は3年(2009-2011)に渡り、愛護団体や保健所に保護された”犬”を対象に行ったものです。調査と言っても殺したわけではないのでご安心ください。フィラリアに罹ってる犬に特徴的な抗体を調べたんです。


―都内のフィラリア有病率は23%―

その結果、都内の保護犬の有病率は 23% とという事が分かりました。
全く予防をしないと 23% がフィラリア症になってしまうという事ですね。
そして、この調査では色々な事が判明してきたので、詳らかにしてしんぜましょう。。って自分が調べたわけでもないのにエラそう。。

―判明1.有病率は年々下がっている―

日大では同じ調査をその 10 年前 より行っています(1999 - 2001 )。
この時、フィラリア症の有病率は 46% でした。10 年後の調査では 23% です。
10 年で有病率は半分ほどになってるわけです。

―判明2.都心ほど有病率は低い―

23 区内での有病率は 18.2% だったようです。
23 区外(八王子、多摩とかですね)では 28.9% だったようですね。

判明3.雑種ほど有病率は高い―


保護された雑種のフィラリア有病率は 50% でした。
保護された純血種のフィラリア有病率は 10.3% でした。

結論:犬のフィラリアは減っているが予防はすべき。

この結果は公衆衛生の分野で意味を持ちます。
フィラリア症は減ってるワケです。。この結果を踏まえ
一部のプロ市民は”フィラリア予防不要論”を訴えているのですが。。

ここ10年、飼い主の皆さんがフィラリア予防に勤勉にいそしむことで
フィラリアを保有する”蚊”が減少した?
あるいはフィラリアの感染拡大が抑制できたのでは??とも考えることも出来るわけでして
23区外での高い有病率は飼い主の動物医療へのアクセスのしやすさで説明付きやすいのかなと思うのです。

勿論、この結果は対象動物が保護された動物であることから
個体の年齢特定が難しい、保護されるまでの過程が様々
そもそも”蚊”を調べたわけではないのでフィラリアそのものが減っているのか?どうかさえも怪しいわけですが

集団予防を重ねることでフィラリアの有病率をさらに下げることができると考えるほうが自然な気がします。

犬ジステンパーやパルボなど発生頻度も下がり
予防接種は意味ないのでやりたくないという飼い主がいるのですが、マナーとして打たなきゃいけないんですよね。。天然痘もそうやって抑え込んで最後には絶滅させたわけですから。


フィラリアの話をしようとして
話題がとてもずれてしまいました。。私の元々の研究室が公衆衛生なので集団予防の話になると学生時代を思い出し筆が滑ります。
気が向いたら集団免疫の話でもしようかなと思いますが

次回は猫について考えて
最後に、内科治療について書きたいとおもいます。
日本語は日本語で難しいなぁ。

来月から忙しい。。続くと言いつつ、もしかしたら続かないかもしれない。

注:何度も申し上げていて恐縮ですが分かり易さを一番に考えて書いてます。
分かりにくいと思いますけど。。獣医学的な正確性はある程度、犠牲になってます。


参考文献
Prevalence of Dirofilaria immitis among shelter dogs in Tokyo, Japan, after a decade: comparison of 1999–2001 and 2009–2011
家畜寄生虫病学(浅倉書店)
図説獣医寄生虫学(メディカグローブ)

Prevalence of Dirofilaria immitis 

Prevalence of Dirofilaria immitis